5月25日の「政府開発援助(ODA)に関する特別委員会」は実に有意義であった。海外コンサルティング企業協会から会長、副会長、専務理事の3名と国際協力機構から理事2名を招き、わが国が進めてきた開発協力プロジェクトの問題点をじっくりと洗い出すことができたからだ。予定時間をオーバーするほど活発な議論が戦わされた。小生もわが国のODAが抱える課題をアメリカ、イギリス、中国が展開する強かな国際援助と比較しながら議論した。
かつて、日本のODAは世界ナンバー1であった。中国へは20年間に6兆円もの有償、無償の援助を行なってきた。そのおかげで、今日の中国の繁栄があり、経済発展に不可欠な道路、鉄道、飛行場、港湾、学校、病院など社会インフラの整備が進んだといっても過言ではない。
ところが、中国からはほとんど感謝されることがない。北京や上海をはじめ主な国際空港には日本の資金援助で建設されたことを示す記載もまったくないのである。そうした実態は拙著『たかられる大国・日本』(祥伝社、2005年7月)で詳しく取り上げた。
そんな中国は今や途上国への援助ビジネスにおいて日本を蹴落とし、「国際援助超大国」の座を占めるようになった。とくに、これまで日本が長年にわたり資金、技術、人材育成面での援助を通じて経済、社会発展を支えてきたアフリカ大陸において、その日本の援助を流用するような荒業を使って、今や日本を凌駕。
そして、中国政府は「アフリカへの3億人移民計画」も打ち上げる勢いだ。要は、資源の豊かなアフリカを中国の支配下に置こうとしているわけで、ODAもその手段という位置付けに他ならない。
そんな中国の国家戦略と比べ、わが国のODAは目的も手段もあいまいになっている。総点検が必要なことは間違いない。本日の議論から新たなODAへの道筋が生まれることを期待したい。
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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。
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